シャープな顔のヘレンミレン 扮するマダムマロリーが経営するのは、ミシュラン一つ星の洒落たレストランである。
ハト料理とか珍しいクイジーン(料理)を出すので有名だ。しかも大統領が訪れることもあると。
真向かいにできたのは、インドレストランである。賑やかなインド音楽がきこえてくる。
両方のレストラン同士でバトルが始まるのだった。
フランスの伝統を守るレストランではインド料理が我慢ならなかった。強い香辛料を使って舌を痺れさせるだけと思っていた。カルダモン、ガラムマサラ、etc.
だが、インドレストランの若い息子の料理の腕は超一流のものだった。
だから、微妙な香りや舌触りのフランス料理もすぐに理解してレストランのシェフより上手く作れるようになってしまった。
彼の料理を一口食べたオーナーのマロリーは、その味に心底驚く。だがそんなことは誇り高いマダムはおくびにも出さない。「フランス料理が、インド料理になどに負けるわけがない。負けるわけにはいかない。」そう心に決めるのだった。
だが自分の店のシェフが、インドレストランに放火した事件を契機に彼を
引き抜き高い給料でマダムの店で働かせた。彼が居れば、ミシュランの二つ星も夢では無いだろう、とマダムは予想を立てる。ミシュランの星とはそんなにも大きなものなのだろう。
インド人の父は息子が出て行くことに寛容さを見せた。父には息子が星を勝ち取るだろうと確信していた。
遂にミシュランの本部から直接電話が来て、星が二つになったことを知らせた。
マダムマロリーは、30年も待ちに待って二つ星になった事をよろこび、むせび泣いた。
その後彼は直ぐに引き抜かれパリの有名レストランで働くことになった。有名になった実力のあるシェフは大都会でさらに腕を磨くのが伝統とされていた。
彼はすごく大きなレストランで働き始める。だがそこは本当の戦場であった。砂漠のように広く感じる店で
行けども行けども、作れども作れども、餓鬼道のようになった人間の胃袋は満足しない。そんな地獄のような仕事場だった。
彼は段々と天衣無縫なレシピの魔法が使えない環境に、なんとなく息苦しさを感じるようになる。
しかしパリの新聞や雑誌では彼を褒め讃え、すごい新人のシェフが現れたと騒いだ。
だが、何かが違ってしまったかれ。料理を作る楽しみもなくなったように感じ彼。ある日、突然に元の田舎の店に帰ってきたのだった。
そこで恋人のと二人でこの田舎にレストランを開く。そう皆に宣言する。
そのとき、彼にミシュランから星三つの電話がかかるのだった。
だが、彼はもう電話には出なかった。
彼は愛する人と、美しい自然の恵みがあれば、良いものが作れると思うのだった。
マダムマロリーは自分のレストランを若い二人にプレゼントした。
家族に、この話を三行にまとめて書けー!と怒られた。