ノーベル賞にしたって、この小説は理解しがたい。まず、臓器移植の為に少年少女が集まって生活している、そんな大きな国立の建物がある。そこは閉鎖病棟のようで、外には、境界線が敷いてある。
そこから外に出る事は禁止されている。
建物の中では、子供らに洗脳教育が当たり前のように為されているのだった。
少年少女らは、外に買い物に行ったりはできるはずもなく、とても小さな世界で、管理者に守られて生活し、大人になって行くのである。
このような 陰気な話を、イシグロはどうして思いついたのかな。いや、なぜ思いついたのかなと、
そこが分からないところだ。
題名の never let me goという歌は、ものすごく情熱的な恋の歌。キャシーが持ってはならない心の有様であった。kiss kiss kissing ! なんていう歌だもの。皮肉にもほどがある。
どこまで言っても陰気であり、それはこう言った閉鎖的世界に幽閉されていれば、当然のことだが、これではあまりに、人間であれば自爆するしかない設定。
脱獄するとかそう言った場面を作ってもおかしくないだろう。
なのに皆がハンコを押したようにえらい大人しく覇気もないままである。
主人公の女キャシーは、えらい老け込んだような顔をした女だった。艶のない皮膚、シワっぽい皮膚で、
平静さや冷静さを描こうとしている。そうでもしなければ、こんな場所で平静さは保てないものね。
もう一人のルースは、名前のごとく自由奔放な年相応な女の子である。
恋をして男の子と深い中になるが、なんと言っても施設の中での出来事であるのだ。プライバシーなぞありはしない。恋と言っても恋にならない恋であった。
この子も、結局臓器提供して死んでいくのだが。
主人公の女はトムという男の子とついに恋仲になるが、トムも死んでしまう。
キャシーは、介護人という職について、自分の仲間たちの介護に当たっていて、特別な地位にいるように見えた。しかし、結局は、皆と同じく、臓器提供をしなければならない時が来たのであった。
何もかも無くなっていく人生。何もかも幻のような仮の人生。
この子たちは全部、だれかのクローンだというのだから驚きだ。まさに仮の姿の仮の人生である。
だが、これも仏道か。この娑婆は仮の住まいと心得よ。とあるからな。
イシグロって、両親共日本人だし、何かその変に秘密がありそうだな.
映画では主人公が、キャリーマリガン(華麗なるギャツビー)、ルースは、キーラ ナイトレイ といった
美女揃いだが、マリガンは、役どころで、グッと抑えた演技になっている。