今更ながら石ってすごいね。硬くって、重くて、ちょっとやそっとじゃ動かせない存在である。
石でできたお地蔵さんは、たぶん江戸時代ごろからずっとそこに立っているんだ。
ほぼ大人の背丈ぐらいはあるが、坐しているのでどっしりとして安定感のあるものだ。
赤いヨド掛けをしているのはお地蔵さん自体が童子か童女であるからだと推測できるのだ。
嗚呼、哀れや、お地蔵様は大人のズル賢い知恵も持たず、長きにわたって、人々を眺めて来られたのだね。
子守のお婆さんに連れられて、よく、拝みに連れて行かれたものだ。ただ手をあわせて、頭を下げる。
久々に、その前を通ったのだが、お地蔵様の顔は、まん丸だと思っていたのだが、なぜかやつれた
頬の少しこけた面長のお顔であったのだ。あれれー?という訳で、驚いてしまった。
4・5歳の頃の記憶では、何故かよく太ったおじさん顔だっただったのに、よほど長年ご苦労されたのかと、お気の毒になった。
今では街も変わってしまったし、純朴な人はもういない。すっぽこを、守ってくれた多くの腕、あれは、きっとお地蔵さんの光だったような記憶。
ただもう、妬みもなく、憎しみもなく、疑いもなく、野望もなく、そんな時間があったのだ。
お地蔵さんだけはきっと知っているんだね。