最初の滑り出しが美しいピアノの内部の撮影に、あっと驚くだろう。トリュフォー監督の軽快な作品である。天才ピアニストに、フランスの誇る、かのシャルルアズプナブールを起用している。アズナブールという長ったらしい、勿体ぶった響きが嫌いで、スッポコはどんな芸人かは知らないのだが、なぜか名前は知っているのだ。有名な人らしい。
ちょっとかっこいい中年のおじさんだった。ピアノは、彼自身が弾いているんだと思えるところが、いいのである。何と言っても芸術家のアズナブールであるからだ。
アズナブールにはかわいい童顔の恋人がいて 、カフェのウェイトレスをしていた。ある日、ある有力なプロモーターの男に言い寄られて、男のものになったら、アズナブールを売り出してやると言われる。一介の貧しいピアノマンだったアズナはそのあと直ぐに、大舞台でピアノ演奏会が開け、新聞に乗るほどの有名人となる。彼は幼げな恋人が、プロデューサーだかプロモーターだかに体を売ったことを知らないでいた。恋人は、自分のしたことを悲しみ、後悔し、罪を感じて日に日に衰弱していったのだった。「私は悪い事をした。私は汚れた雑巾と同じだ。」そう言って彼女は身を投げて死んでしまう。
その後の彼は、名声を捨てて、掃除夫としてある店で働くのだった。誰も彼のことを知らない店で。
ある日、埃をかぶったピアノに向かい凄腕を振るうアズナブール。すぐに人気者になりその店の専属ピアノマンとなった。そしてまたかわい子ちゃんと知り合いになり、恋人同士になる。だが店の店長に嫉妬されて、首を絞められて、殺されそうになる。落ちているナイフを拾い、店長を刺してしまうヤクザなアズナブールさん。ダメダメである。警察に追われて逃げるのだが、雪の厚く降った山小屋まで恋人と逃げるのだった。
だが、そこでまたその新しい恋人は、銃で打たれて、死んでしまう。
二度までも女を死なせる極道な男であった。
ところで、アズナブールには極道の兄弟がいた。そして犯罪をおかし、山小屋に逃げていた。
そこに、アズナブールも逃げてきたのだった。
この兄弟の顔は悪事を企む怠け者という顔であって、どうしようもなく倦怠と嫌気を誘う顔である。これもトリュフォーの演出である。彼は悪者の顔の描き方がとてもうまいのだ。いやフランス映画は、とてもさりげなく悪者を的確に描くので、その部分では洗練されているといえる。
この兄弟はならず者だったが、アズナブールだけは早くから音楽の才能があり、お金持ちに預けられて、音楽を学んだのだった。しかし、血は争えなかったというべきか。
アズナブールも殺人をおかしていまったのだった。
さてその後彼はどうなったのか?
それはいいのだが、説明に疲れるから嫌になっちゃう。
小さい弟も養っているが、、こいつもなかなかのミュージックキャラだ。この存在が、存在意味不明なんだ。ただすごい音楽オタクそうである。ただ面白いから子役で出したのだと言える。
アズナブールは、何事もなかったかの様に、店に帰り、ポンポンとピアノを弾いた。
美しい音色のピアノを。
学習しない男の話なのか。主題もピンボケではあるが、楽しめればそれで良いという趣向だろう。
見た目が、アズナブールとトリュフォーは、よく似ている。双子かとおもえるほどに。二人とも小柄で、すこし頭でっかちで、神経質な芸術家である。監督は、音楽にも造詣が深く彼の映画の音楽はすてきなものがおおい。自分の代わりに、本当にピアノを弾けるアズナブールを主役にしたかったのだ。
一緒に入っていた「あこがれ」の方が、小品ではあるが作品としては優れていると思う。あこがれはは、監督の処女作であるそうな。
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