スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

聖(さとし)の青春 2003年大崎善生 原作

将棋の話はなぜか熱くなるものがある。 このノンフィクションは映画化されて、松山ケンイチ主演で上映されるそうだ。

これはネフローゼという重い腎臓病に買った少年が、メキメキと将棋のうでをあげてゆき羽生名人や

谷川名人とも互角に戦うまでに成長して行く話である。しかし、病魔は容赦なく彼の体を蝕んで行った。五歳にならない時からずっと病院で過ごしているサトシであった。哀れに思った父親がさとしに将棋盤を持って行き、簡単な将棋を教えてやったのだが、ベッドの上で過ごしてばかりの彼にとっては大きな贈り物であった。

安静にすることが絶対条件であり運動のできない体をであった。入院するまでは野山を走り回っていたワンパクな少年はなぜか業病に捕まってしまったのだった。

地元広島ではもう彼の相手になる人はいなかった。大人も次々と負かせててしまったのだ。

大阪で腕を磨いたが、やはり東京ということで東京に出た。

そこでは本当に強い奴らがうヨイヨいて、サトシの存在など霞んでしまった。

せいぜい田舎の将棋大将であったことに気づき愕然とするのだった。

しかし彼は勉強に勉強を重ね研究して、ライバルたちを蹴落として行った。

結果、段を取り対戦相手も有名なプロ中のプロたちと対戦するまでになった。

そこでもやはり研究に勤しみまた強くなっていくのだった。

彼にとっては将棋と病気は相反するものであり、両極端のものでありこの二つを一人の人間の中に収めることは超人的なことであったとおもわれる。

 

ネフローゼは体が浮腫む。尿にタンパクが流れてしまうので血液中の水分を調節する役目のタンパク質が不足してむくんでしまうのだ。だから彼の体は、あのようにふくらんでいるのだ。

 

彼がプロになるまでには幾多もの試練があり、幾度も高熱で倒れこみ 何日もミノムシのようにじっとして暮らさなくてはならず、健康な人の何倍もの苦しみをのりこえてきたのだった。そんな中で厳しい何時間にも及ぶ試合に臨むことはギリギリの選択でもあったのだった。

それでも将棋は彼にとっては生きている証であり、運命であった。神でさえもあっただろう。

彼は決して弱音は吐かなかった。

プロになった彼の周囲には尊敬する谷川氏や、羽生善治がいた。谷川の打つ手は光のように速いので恐れられていた。雷光のようであった。サトシは谷川を倒すのじゃ、と悲願を誓った。

羽生は神のようであり、質がまるで違っていた。サトシは羽生にだけにはただただ尊敬と敬愛の情を持って接するのだった。。羽生も、サトシに屈託のない接し方をするのだった。

体力も限界が近づいていた。新たに癌ががみつかり、それは他に転移していた。

彼の体はもう長くはなかった。

師匠の森はずっと彼の面倒を見て彼を可愛がって病気の時もつきそうほどで看病も幾度となくしてきたが、今回だけはもう手の施しようがないのだった。

悲しい別れが来たのだった。29年を駆け抜けたかれであった。

 

 

聖の青春 (講談社文庫)

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