東北大震災が2011年なので、その1年後に公開された映画である。
そして、公開された2年後に高倉の健さんはこの世を離れていった。(2004年)
刑務所に勤める刑務官である高倉は 仕事柄、堅苦しい男であった。ある日慰問に来た童謡歌手の田中裕子と縁あって付き合うようになる。 田中の男は、じつは刑務所に入っていて、彼のために歌ったのだと告白する。彼は刑務所内で病死する。しかし高倉は田中と結婚して平凡に暮らしていく。だが、数年後田中は病魔に倒れて死んでしまう。高倉は彼女のことが忘れられない。彼女の残した手紙を基にして、長崎の平戸までお骨を持って行くことにした。そこは彼女の故郷であった。
海にお骨を撒いてほしい、という願いをかなえるためだ。途中で 同じく妻を亡くしたという北野たけしと意気投合して、一緒するが、警察が来て、たけしを連行していく。有名な車上荒らしの犯人だったのだ。彼は自称、国語の教師といっていて山頭火の歌など読んで見せていたのに、と驚く健さん。健さんも仲間ではと疑われたりするのだった。「夜叉」という映画では、 たけしは DV夫で、健さんにボコボコにやられていた。田中は、夜叉の刺青をした元ヤクザの健さんの女になるのだった。
あなたへでは、何気ない風景に溶け込んだ老人ぽい健さんもよかった。まず一番はじめの場面から、これはおもしろい映画になるなという予感がした。画面がぶれてなくてきれいだった。時折、ああ年取ったなあと、ぎくっとする場面もあるが、80を越した健さんは精一杯踏ん張って演技したのだとおもうとジンワリとくるものがある。ただ物語は平坦で単調であるから、わくわくするようなおもろいものではない。刑務官というまじめな生活を積み上げたようなかんじというか、食パンばかりのパン屋というか。そういったまじめなかんじである。
田中の歌う「星めぐりの歌」は震災の後盛んに歌われたが、これほど美しくしかも音程のはっきりしたものは他にまずない。この歌はちょっとメロディーがむずしいのよ。
歌がめっちゃうまいじゃん!平戸のある港でいろんな人の世話になりながら、やっと船にのり妻の希望をかなえることができた。皆がいろいろな人生の問題を持っていて苦しいのは自分だけではないと知る健さんであった。