スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

超国家主義  2018年  中島岳志

およそ二十数人の奇人変人の、あるいは偉人と言われた革命家たちを集めた本。明治元年生まれの北村透谷を皮切りに、世の中を騒がせたツワモノたちが並んでいる。透谷が、文学にも、キリスト教にも救われることなく、不運な人生の人だったと知った。世に名を知られた人物がこの私より弱っちい人間だったことに驚いたわけだ。彼は26歳にしてすでに老人だった。

 

悩み懊悩する青年たちの行く道は、つまり国を変えるという、変革に進むのだ。そうやって、自分の苦しみを昇華させていこうとしたのだ。それは、どうしても過激な道となり、国家の要人を殺したりする事に、心血が注がれた。暗殺などが彼らの強い盲信と共に行われた。

そこには、個人と、国家が一体になり、国の元になっている大君(天皇)

を奉り、その恩に報いる為とかの考え方が、彼らを動かしていた。

試験に失敗したり、職業につまずいたりした若者が多く入信してきて、強く生きがいのある思想に

どっぷりとはまり込んだ。

 

熱狂的な盲信というか信じる心は命をも投げ打って後悔はしないというものであった。

 

国と自分がひとつになるという思想は、自分たちの都合の良いように、国を変えるいうことになってゆくのだった。それが叶わぬ時は、テロを起こしたり自殺したりして訴えるのだ。

駄々っ子の様な青少年達を引き寄せるカリスマ達がいて、集団をつくっていた。

青年らは純粋で、直線的で、無垢な心の持ち主が多かった。彼らの熱狂は無限の様にさえ思えるものだった。

またカリスマ達も、純粋無垢を売りにしていてアジアの国日本を守る国粋主義の様な形をとり、営利主義の近代的時代に逆行するものだった。それが悪いというわけではない、それを具象化して体現化したしてしまった結果、偉人として崇められたわけだ。

その結果、カリスマ達は、政府からも重要視される様になり、外交の場に出たり、政治の困りごとの相談相手として頼りにされた事だろう。そうなると、ますます部下からは尊敬を集めたのだ。あの方は、間違いないーあの方はすごい!

 

聞くもおぞましく、見るもおぞましい話である。誰も自分達の汚れには気が付かず、他人の汚ればかりに目に行くのだ。心が綺麗?そういう人間ほど、他人の汚れが気になるものだ。

 

この本を手にとったのは、新聞で中島の記事を読んだからだった。今の世の中だんだんと言いたいことが自由に言えなくなっていくそんな時代になっている。そんな窮屈な世の中でどうやって生きていくのだろうというようなことが書いてあった。私はこの言葉に魅了され、この人の本を読んでみようと思った。

 

ここには過激に生きた過去の人々が描かれている。こんな人々が存在していたのかと、改めて驚くが、元々、日本という国にはそういう素地がある国ではないのだろうか。自分も含めて日本人というものは。

 

この本、いがいにも、社会的ハードな読み物というより、文学的読み物でしたね!

 

 

 

超国家主義 (単行本)

超国家主義 (単行本)

  • 作者:中島 岳志
  • 発売日: 2018/03/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)