なんとなく広い草原から、吹いてくる風の様な作品である。なので風の様につかみどころのない気持ちになる映画だった。だが、コレは実話であり、黒人差別のアメリカの話だ。
ドン・シャーリーという、天才黒人ピアニストが、アメリカ南部に向かってツアーに出る。南部に行くほど、黒人差別は、つよくなっていく。
だが、ドンシャーリーという黒人は、お金を払って、白人を雇い王侯貴族の様な生活をしている。
そこに運転手として雇われたイタリヤ系のトニー(ヴィゴ モーテンセン)であった。彼って結構有名な俳優だよね。その彼が、気の良い用心棒兼運転手となった。彼も昔は細くてイケメンで張っていたが、ここではすでに大食いの大きな腹のおじさんであった。どっちゃったのかしら。
天才ピアニストの弾くピアノの音は、なんかポップ的などっちゃったのかしらという感じの曲がほとんどで、ポップなのか、クラシックなのか、どっちつかずの曲である。ビートルズの曲を、ちょっとクラシックにアレンジした様な曲。
なぜ彼が天才なのかは、謎だ。確かに上手いという気はするが、彼の潔癖な性格が音に刻まれている様で、息苦しい。製図を見ている様な理路整然とした音楽だ。シャーリー演じる俳優もそれをよくわきまえてスマートな演技に徹している。これがヒットした理由の一つだね。
いろいろな街で、文化人や、お金持ちの紳士淑女が集まって彼のコンサートを聞きに来る。何故これ式の音楽に熱中するのか。その頃はこれが、流行の先端を行っていたのだろう。
ただ音楽がわかる文化人だと認められたいがためにだ。
彼が弾くのはいつもスタンレーピアノだ。その他のものは受けつけない。
彼の泊まるホテルは、グリーンブックという観光案内にあるホテルで、コレは、黒人専用 となっていた。
白人のいるホテルに泊まりたくても、泊まれないのだった。食堂もトイレも、白人とは別だった。
だが、シャーリーたちは、差別されながらも果敢にツアーのために進んでゆく。
町の酒場で、シャーリーが弾いたピアノは、極上のもので、みんな大喝采。
そして2ヶ月間の旅も終わりまた故郷ニューヨークのブロンクスに帰ってきたトニー。奥さんや子供たちが待っている家ではクリスマスパーティーの準備をしていた。クリスマスイブには必ず帰ってくると約束をしていたトニーであった。最後になってトニーは疲れが出てもはや運転ができない。
雇い主のシャーリーがハンドルを握って、家までたどりついたのだった。
この車の色、形カッコよい。
そしてクリスマスイブに間に合ったトニーさん。
シャーリーさんも旅を、思い出し、感慨にふけるのだった。