チリの炭鉱の落盤事故である。まだ記憶に新しい事故である。
33人の鉱夫たち、ほぼ筋肉のついた身体の男たちである。地下500メートルとも、700メートルとも言われた地下に60日以上閉じ込められ、地上に出られなかった。
まず食品をとても細かく分けて、平等に配った。次は水である。ずっと後で、地下水を掘り当てるまでは、少しずつ分けて飲み繋いだ。これに成功したことは大きい。
だが
こんな生活がいつまで続くのか、20、30、40、と、日にちが経つにつれて、もう絶望的になった。
食物をめぐる諍いは、恐ろしいものだった。こんなところで争っても、なんになるのか。
ひとりの男が、リーダーなり、争いを諫め、くじけそうなメンバーをはげましつづける。
仲間同士の信頼で生きていたようなものであった。
地上でも、ついに国が動き出したが,絶望的という見解が断然であった。
しかし経済省の大臣は、世界中の建設会社に応援を頼み、色々な大型機械が導入された。しかし、もうずいぶん日数が経っていたので、
誰も生存しないだろうとの元で土が掘られた。幾度か、ドリルが折れて、失敗。
ドリルの音を聞いて地下では湧き立った。だがドリルは、別の所へいってしまう。
だがついに一つのドリルが、穴を開けた。布をまき付け、赤いペンキをつけまくったドリルが、地上に上がって来た。
生存者がいたことに驚く地上の人々。
もう時間が無かった。50日以上の日にちが過ぎ去っていた。
そうする間にも、地上からカプセルが届くようになった。食べ物がはいっていた。
食は満たされたが、地上には出られなかった。
厚く大きな岩が邪魔してドリルが下に降りてゆかなかった。これでは人間を助けられない。
ダイナマイトで岩を爆破する地下の鉱夫たち。これは大き過ぎる賭けである。失敗すれば、岩が落ちて来て落盤してしまう。
しかしドリルが通るためには、やり遂げるしか無かったのである。爆破も成功。
そこへついにアメリカのドリルが、生存者の元へやって来た。人間を乗せて運ぶカプセルも降りて来た。
一人づつ乗って地上へ上がって行く。全員が何とか無事であった。
この不思議な話は生きる希望を失わなかった人間たちの死に物狂いの闘いであったのだろう。