まあ、新藤兼人監督の渾身の作品である。京都の古い色街に住む舞妓さんや、芸者さんの話。
微に入り細に入り、でも美味しいところを集めた宝石箱の様な気がする。
女も、男さんもそれぞれに練られて、素晴らしい色合いに仕上がっている。
主演の佐久間も、一番うつくしい時期だろうし、料理屋の旦那も、遊び事にはプロの様な出立である。流石だなあ!
佐久間の母親は妾だったが、とても人情に篤く、いろいろな人を助けていく。その善意の心根も普通の人には真似もできないところだが、周り廻って、結局、佐久間やその妹の運命が好転して行くという気がする。その筋書きは、新藤兼人の腕の見せ所でもあった。妾の母が、本妻の家に見舞いに行く下りは、最高である。下働きのお婆さんの有り様も間違い無いだろうところで描かれている。
つまり、新藤兼人の才能を遺憾無く発揮された作品となった。愛妻物語から始まっていろいろな映画を撮ってきたのであるが。
佐久間は、次々に男を乗り換えて行くが、恩のある人に対して冷たく冷酷である。
佐久間は、男に殺されそうになったが命拾いするし、妹は花街を出て、新しい人生に旅立って行く。
美しい着物に包まれた女の執念、欲望、また尽くす心など、盛り込んだ粋な映画である。