一戸建ての家を持つ三浦友和は、二人の男児の父親だった。とにかく、自分の建てた家を、とても大切に思っていた。
しかし社会人になった長男は、営業の成績が上がらず、リストラされている。
長男は子持ちの女と、できちゃった婚をする。
しかし、絶望感に、ついには自殺で死んでしまう。
描いてきた理想とだんだんくいちがってくる家庭の様子に、苛立ちを感じる三浦であった。
頭の良かった長男には特に、期待が大きく、良い会社に入って出世してと、コースを決めていた。
次男は、怠けやすい性格で、三浦は、早く、大学を受けろとか、バイトでもしろとか命令
や説教ばかりでしていた。
まあ、どこにでもありがちな家庭の姿である。その密室で、ジワジワと進む心の鬱屈と荒廃。
三浦本人は、小さな「葛城金物店」を営んでいた。あまりお客も来ないが、一応なんでも揃っている。
毎日そこで店を開けるのが、日課であった。
そうそう、葛城(かつらぎ)というのは、この三浦が扮する親父の名字である。なるほどね。
長男が死んでのち、今度は次男が、駅で無差別殺人を起こし、こうなることは、なるべくしてなって行くのか。
次男が死刑の判決を受けてから、住人たちからの嫌がらせは激しく酷いものであった。
だが、彼は、自宅をあくまでも守りぬくことで、心の平衡を保っていた。
ある女弁護士が、次男と獄中結婚を決行する。これもびっくり。
女性弁護士は、死刑反対の強い気持ちを持ち、死刑囚と結婚するという暴挙にでた。
これは明らかに異常な状態であったが、彼女は、人間の尊厳を大切にすることに燃えていた。
死刑囚と結婚するなんて、どれ程の覚悟が必要なのかと言うことになる。
見ているうちにイロイロ心に来るものがあり、感動というよりも、もっと人生についてイロイロ考えさせられて、こんな映画は多分めったにないのでは、おもうようになった。
またこの一件なんの変哲もなく進む映画の中に、現代の人間の持つおよその悩みが、凝縮されているようだ。憎しみあい、愛し合い、妬みあい、殺しあう人間たち。
だが、これが、本当のところ我々の普通の日常なのではないだろうか。
この事件は、どの家庭でも起こり得ることなのだ。現代の歪みきった社会では当たり前であろう。
誰にもその可能性がある。
その可能性の切なさを伝えようとした映画だ。
だが、踏みとどまった者は、自分の人生での立ち位置を真剣に考えることになるのだ。
哲学的というか、そういう壇上において考え得るものが、ある。
百恵の旦那であることを逆手に取った、三浦の演技は、かなり手堅いものになっていておもしろい味があり新鮮である。
三浦は、百恵の旦那