スッポコは鳥刺しの話を、よく父から聞いた。父は鳥刺しの話がなぜか大 好きだったので、勝手に話させておいた。
年に3回は機嫌よくうれしそうに話すのだった。現在もあるのだろうか、こんな鳥刺しなんて。昔は、モチ(モチの木の樹液)と竹で小鳥をとり、売ってお金をもうける職もあったらしい。
豊川は、鳥刺しの名人だった。それだけでなく、それを隠し剣として鍛えていた。
彼の亡父は、体を鍛えるためには鳥刺しが良い。この技を鍛えておけ、といっていたこともある。
あっという間に、心臓をついて相手を殺すが、この技を使うときは、「自分も死んでいるのだ。」と言う。
それほど究極の剣であった。
城で殿様に仕えていたが、殿の寵愛する妾を切ってしまう。この妾は、財政を浪費で傾かせるような存在であった。妾が死んで、しばらく謹慎の身であったが、
その後許されて、再び、城で、殿様の一の護衛として勤めた。
だが、悪い家老に騙されて、皆から殺されそうになる。
一人として味方はいない。何十人もの家来が、襲いかかるがが、しぶとく戦う悦司。
とうとう生き絶えて、ガタンと動かなくなる。
その後、家老が死んだ悦司の側まで来て,「恨むなよ」という。
その時だった。死んだ筈の悦司が、サーッと動いて、家老の心臓を剣で、刺し抜いた。
あっという間の出来事で、殿様も、家来も、驚き慌てる。
鳥刺しの剣は、死んだ時の必死剣、という言葉通りであった。
豊川主演にしては、結構渋めの映画で、藤沢の原文を壊さぬように努めているようで、良好だ。
女とできてしまうのはまあ、シャーないと言うわけで。