小説が発表された明治20年代1890年代というと、
でもとても昔という気がするね。彼女は傑作を次々と生み出して、若くして死んでいる。24歳であった。
明治5年生まれだから1872年である。ワテの祖母が1890年生まれであるから、ずいぶん昔だね。
一葉は、短歌だか俳句が、めっちゃうまくて、賞状をもらって首席で卒業といった具合の秀才であった。いや天才といっても良いぐらいか。
にごりえなんて、読んだこともなく、古文長の長々しい文章が、延々と続くので、普通には読めないだろう。
とても綺麗で、売れっ子の若い芸者が居た。その芸者は、見た目の美しさが、その界隈でも一番で、男たちが放ってくれないのだった。だからこのおんな(お力)に入れあげて、稼いだお金をみんな使ってしまう男も多くいたのだった。
皆の憧れのこの女、今で言えば、男たちのアイドルとでもいうような女であった。
自分でもそれを誇りに思い、自分ほどの女はいないと思っていた。男にモテモテで美しくて若くて。
こんな鉄面皮の女でも、実は好きな男がいた。今ではただの貧乏くさい男であったが、金のあった頃は、この女のところに通い詰めてねんごろにしており、お互い好き合っていたのだ。
しかしそいつには妻子もいて、最近は、働いていなくて、家族は食うや食わず。
貧乏になったのは、皆あの女のせいだと、妻は思っている。妻はガミガミいうばかりであった。
しかし男が堂々と遊べる時代のことである。妻子の存在は、関係なかった。お金さえあれば、好きな女が買えた時代だ。
問題は、お金がなくては問題にならない世界の話である。
女は一人で、そのボンビー男を忘れようと、見えぬ努力をして、もがいていた。
ある日、店に、結城という品のいいお金持ちの男が来る。冗談を言い合って酒を飲むのを楽しんでいた。
どこの旦那なのか、教養のある顔立ち、立ち振る舞いは、他の男とは違っていた。
女が時々見せる、寂しげな表情に、悩める女の姿を認めたのだった。
そしてとうとう、恋しい男のことを聞き出す。お互いに好き合っているとのこと。
結城とおんなの二人が、話しながら歩くのを見て、勘違いして、狂気に走った。
いかにもカネモの旦那っぽい男と一緒の女。
女は自分の人生をあきらめていた。親たちもマトモに生きようにも次々と不運が続き、家は破綻していた。だから、生きるために、この世界に入ったのだ。どうせ、ヤクザな人生さ、と。
おとこは、男と一緒の女を見て、刃物を持ち出して、女を殺してしまう。そして自分も死んでしまう。
突然のことであった。
だいたい、身の程知らずの話である。ときめくアイドルを、自分だけのものにするなんてさ。
だが、この血迷った男には、もはや、女しか目に入らなかった。
色町ではこんなことはよくあることだったのかもしれないが、町一番の売れっ子が、
刺されて死んだとあっては、大スキャンダルとなった。
真面目そうな一葉が、色町の話を書いたということが、まず驚きである。
結城の旦那は、二人の葬式が出るのを寂しそうに、見送るのだった。
明治のこととて、その後、狐火が、よく飛んだそうだ。
色町に住む儚い住人たちの生きざまを、一葉は、よく観察し、描いていった。
濁った町、酒の匂いの風、男と女の駆け引き。若い一様にそれは重く辛い人生に見えたことであろう。
そこから出たくとも、出られない、羽ばたきたくとも羽ばたけない。そんな鎖に繋がれたような人生を
一様はそれでも慈しみ、描いたのだ。
ただこれらのことは、現代でも変わりなく、人間は思い鎖をを引きずりながら生きてゆかねばならぬのだ。