庭の本は色々ある。ただ日本の庭園の本となると、なかなか良い本がない。
これはコンパクトながら、どこでも、読めそうなので、気に入っている。
この本に出てくる庭はスッポコに言わせれば、一流の庭たちであり、日本ならではの落ち着いた色合いがうまく出ている。
なぜこんなにもうまい庭の写真が取れているのかが不思議である。庭が深い歴史を持ち、考えられぬほどの無我を持つという、本当に良いものだからであろう。お経に「無所得」という言葉があるが、それに近い気もする。
我こそは庭を知る人間だと自負している人々(スッポコも含めて)も沢山いて、ありきたりの、切り取ったような写真では、満足できない。
この本では、自分が、その庭に足を踏み入れて風といっしょにそぞろ歩くような気分になれる。
また、古い建物たちが、庭にうまく寄り添っていて、好感が持てる。
こんな庭が、自分の庭だと言うのであれば、どんなに良いだろう、と思いながら見入る。
人は、所有する庭に、深い愛情を注ぎ、四季に酔いしれる。
だが、庭を維持することは、現実に困難な問題がある場合が多いだろう。
この本に出ている庭園は、もう、数百年経ったもので(多分)、作った庭師の名前が残っているかどうかはわからない。
このように既に苔むした古い庭を、新しくリニューアルするという試みは 大抵失敗する。まるでツギハギのフランケンシュタインのようなモンスターの庭になっていくのが定めである。
石なども、動かすのはやめたほうがよいだろう。新しい植物を植えるのも、勧めたくない。
土は植物と一体化していて、動かされるのを嫌うものだ。
影や、日当たりが変わってしまい植物にショックを与える。
現状維持ということが意外と難しいのである。
素晴らしい庭と聞くと、その庭に行ってみるが、新しいせいか、キンキンしていて大抵、がっかりしてしまう。
古い庭はなぜかゆったりとしていて、石なども風雪を経て無我の境地である。
池の水も、無我というわけだ。
とりとめのない庭の話であったが、要するに、庭自慢の話である。