小学生の男の子が二人で、山にキノコ狩りに行った。秋も深まったある日のこと,キノコがいっぱい生えているところに行こうということになって、さっそく山に登って行く。
きのこをいやというほど沢山採ったので帰ろうとすると、理助が急に、「さて、ちょっと崖を見て帰ろうか」と言う。一緒に歩いて行ったところ、突然足の下に深い崖が現れた。それは真っ赤な口を開けて下の方は見えないほど深く切り立っていた。赤い壁に、ときどき縞模様がみえる。火山噴火の溶岩らしい。
ゾッとして後ずさりすると、理助が、「もっと下をのぞけよ」という。目がクルクルして、苦しい。
「ここに此処には絶対に一人でくるなよ。此処に、落ちるぞ!」
山には草木が生い茂り崖が見えない。気がついた時には崖に落ちてしまうこともあるんじゃね。
家に帰って兄にキノコを見せたら、なんでこんな茶色い古いキノコばかりを取ってきたのかと、きかれた。
理助は「白いキノコは漬物用と行っていた。うちは煮て食べると言ったら、茶色いのがよかろうと教えてくれた。」理助はサッサと白いキノコばかり採って持ち帰ったのだった。
ただキノコのある、あの崖のある場所だけは兄にも教えなかった。
別の学友と崖に来た。崖のことを自慢したかったのだろう。ところが、その崖は突然現れた。危ないところだった。「ヤッホー、バカヤロウ!オオバカヤロウ」と崖に叫ぶと、同じこだまが返ってきた。
しかし、だんだんこだまが変な風に聞こえてきて、妙な笑い声も聞こえたように思った。
学友と私は、身震いして後ずさりし、次の年は兄らとともにそこにキノコ狩りに行ったのだった。