またまた岩波医師の本だ。彼は医者でありながら、たくさんの本を読み、いつ何時そんな時間があったのかは知らないが、こんなにバンバン読めるものなのだろうか。
この中で 気になったのは、やはり、「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーの「ナイン ストーリーズ」のシーモアという人物、 とアスペルガーを扱った「ミレニアム」、また、ドイツの文豪ヘッセの「クラインとワーグナー」 、日本でいえば、「雪国」の川端康成の「みずうみ」の異色性などである。
どれも、幸せにはなれない主人公であり、社会と共存できずに自滅して行くのである。
またヘッセについては、文豪という名の冠は余計なものであって、彼には似合わない。それほど彼は人生を突き詰めなんども挫折しながら小説を書いた。泥まみれの格闘中に、冠など邪魔なだけだ。
別に彼に肩入れをしてはいないのだが、「ヘッセがスッポコの父親に似ている。」という人があって、
少し反論したかったのだ。むぎわらぼうしの畑仕事のヘッセの写真は、多分スイスに引っ越してからのものだろうが、似てるっちゃにてるわ。
岩波先生は、こんなにたくさん本を読んで、私達にその概略を教えてくれている。
まあ、知らない作品、名前だけでスルーの作品がどんなものかよくわかって助かるね。
ただ、でも、なんか、虚しいよ。楽屋裏を覗いてしまったようで。
先生は、医者らしく、あまり多作にせずに、ゆったり構えていた方が、信用も出来るし、心にも残る。
儲けはあくせくしてもダメ、ゆっくりの歩調が財を連れてくる。もう少しゆっくりやろうよ。