スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

映画 カフカ 変身 2002年

この古くて、新しい不思議な物語は、チェコプラハ生まれ(1883年)のカフカの短編である。

変身は彼が33歳の時に発刊されたのだが、他の「城」とかの作品は、死後に発表されたのだった。

41歳で死んでしまった彼は友人に原稿は焼くようにと遺言していた。しかし友人は焼かなかった。

この映画では初めから終わりまで人間が演じていて、ハリボテの虫などでて来ないのですが、説得力大である。

 

映画の冒頭から、ものすごい陰鬱な天気で、プラハの駅を通勤の中継点にしている彼は、駅から出て暗い雨の中を、歩かねばならなかった。雨がプラハの黒い石の上にザーザーと降り注ぐ夜。

ザムザは家計を支えるために働く青年であった。ただただ家と会社との往復の日々。会社ではイヤラシイ性格の支配人がいて息の詰まるような職場であったが年老いていく両親と妹のために必死で頑張っていた。このあたりのザムザではドストエフスキーの「二重人格」の主人公に似ていると思った。娯楽がないのだった。

彼は、多分、その動きから完璧主義の人間らしかった。

その夜の夢は怖く、支配人に追いかけられて追い詰められていく夢であった。

 

朝起きた彼は、身体が動かなくなっていた。手足が、虫のようにガチャガチャと忙しく動き、寝返りもできない状態であった。 その内、出勤の時間になったが、朝食に現れる様子もないため、両親は心配。  そこへ、支配人がわざわざ家にやってきた。支配人は、朝からザムザの営業成績が、最近下がっていると注意までするのだった。部屋に、いってみた人々は、ザムザの哀れ、発狂した姿を見たのだった。ザムザはその繊細な神経を保つことが出来ずに、発狂の道へと進んでしまった。

それは何かしら、でかい虫の一種になったのだった。自分から選んだ?とはいえ辛過ぎる状態であった。食物も人間の口にするものはダメで、腐った残飯を好む虫のザムザだった。

這って移動し、壁や天井でも張り付いて移動できるようになる。

ザムザが会社に行けれなくなったので、家計を支えるために、パパも妹も働きに出た。

ママは下宿屋をやって料理を出したりした。

家政婦は当然辞めたので、新しいがオニババのような年取った家政婦が来た。

その家政婦に突かれたりしていじめにあうザムザ。

とうとうザムザを見て下宿人も怖がって逃げてしまった。

 

「もうこの家は破滅だわ!」「お兄さんのせいで、何もかもダメになってしまう!もし私たちが大事ならば、お兄さんはこの家から出て行くべきよ!」

  優しかった妹もザムザを攻め立てる役になった。

「お兄ちゃんが音楽学校に行かせてやるからね」といった優しい兄であったのに。

 

家族から甚だしく嫌われて行き場をなくしたザムザであった。存在の意義もなくした。

今まで必死に働いて来たザムザであったのに。

ひどい社会。ひどい家族。ひどい人間の心。ひどい自己の矛盾。

色々な矛盾が虫の身から発散されるのだった。虫にでもならなければこの矛盾は我々のもとに届かないと言うことか。

シュールすぎて理解できない一方で、冷徹な常識を持つカフカの作品は今でも鉱物のごとく、輝きを放ち解明が急がれるのである。

 

 

変身 [DVD]

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