スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

蛇イチゴ 2003年 西川美和監督

植物として、蛇イチゴは、子供の時から、毒だとか毒ではないとか、食べると蛇になってしまうという説まであった。様々な意見があって、結局食べることはしなかった。毒だったら、死んでしまうか、蛇になってしまうかなので、怖いことだと子供心に思ったものだ。蛇になったら、お母さんはワタシのことわかるかしらなんてね。ところが最近、このイチゴは無毒であると本にあった。今更言われてもです。

さらに毒虫に刺されたときに効くそうです。めっちゃイイじゃん。

 

ある家族の日常が描かれた映画であるが、この家族はある意味壊れたまま普通を装って過ごしているのだった。しかし、爺さんの葬式の日に、大勢の人々が集まっている前で、借金取りがやってきて、

主人(平泉成)に向かってはやく借金を払えと大声で怒鳴りちらすのだった。

正常な生活の模範の家族は、実は破産寸前であることがばれるのだった。

長女は小学校の先生をしている堅物の女であったが、同じ先生の恋人がいて、結婚の予定であった。

しかし破産のような家族との縁談なので、向こうから断ってきた。これには、さすがの堅物の女でも参ってしまうだろう。家族の犠牲になる長女であった。

一方父親は、なぜか借金まみれでとっくに会社を辞めさせられて、それでも毎日会社にでるふりをしていて、あわれである。嘘をついていたのだが、つまにもいいだせなかった。いいお父さんぶりっこをしていたかった。母は何も知らずにただ、オロオロとしてばかり、しかもじぶんの娘である堅物の長女が苦手だった。何でもかんでも理詰めでくるので、息が詰まりそうだと感じていた。まあ、何十年も専業主婦などしていれば、理屈より、勘である。包丁で切るように割り切れる事ばかりではないと経験で知っているのだった。

家族皆が、グルグル慌てている時に、長男の兄貴(宮迫博之)が帰ってきた。こいつは、犯罪に絡んだようなことをやっている奴で要注意人物であった。今回も連続香典泥棒で指名手配されているのだった。

そんなことも知らない両親は、長男が帰ってきたことを喜んでいた。破産を救う策を彼が知っていたからだったが、しっかり者の長女が気がついて警察がやって来ると言って、両親を諭すのだった。

そして兄を家から追い出すことを主張するのだった。兄は数年前にも問題を起こし、父親から勘当されて家をおいだされていた。今回帰ってきたのも下心アリアリの為であったのだ。

親たちは、そうだとわかっていても、なかなか踏ん切りがつかないのだった。母は、こんなダメ息子を好いてさえいた。兄が可愛いという。長女は、イイ子すぎて面白みがなくとっかかりのなさがつまらないとさえ言った。

長女は、一人で、この家を守る決意をする。もう親たちは腑抜けであったから。

兄を巧みに誘って、学校の裏山へと導くように誘導した。二人はヘンデルとグレーテルのように、暗い夜の山道を辿ってゆく。

しかし真夜中の山は満月でもなければ、暗くて何も見えないはずだ。なのに、うすぐらいのは何故かなとちょっと引っかかった。スッポコの裏山には、イノシシ、サル、熊などいて、とても歩けたものではないし、真夜中は、「獣の時間」といわれて、忌きらわれているものを、やはり都会の山はあっかるいのかねえ。

山には、蛇イチゴの自生している場所があり、兄と妹はそこにいこうと登って行ったのだった。子供の頃、兄の言った場所に行こうとして、山道に迷って、ガーガー泣いた妹は、もうしっかり者の大人なっていた。兄を警察に引き渡すべく決心していた。そのための蛇イチゴの狩りである。

観客はこの映画で、誰かが死ぬのでは、とか、殺されるのではとか、いろいろ心配することになる。

しかし実は誰も殺されたり、自殺したりしないのである。ただ物語が進行しながら、はらはらして勝手にきみ悪いだけである。犯罪、破産、破談、と辛いネタのつながったストーリーである。

この勝手にきみ悪いというのが不愉快である。風呂にガスをひいたり、真夜中の山道を歩いたり、何のためにするものか。

最後に、山の沢で、兄と別れて、家に帰ってきた長女がみたものは

テーブルの上に置かれた赤々と実った蛇イチゴのツルであった。兄は本当に蛇イチゴを取りに行って、そこからイチゴのツルをぬいてきたのだった。     

  それだけのはなしである。この際なので重苦しいことは抜きにしたい。映画であるのに、結構、リアルな重苦しい内容であり、どこの家庭でも起こりうる事柄のように思えてやるせない。

 

最近はへびいちごも滅多に見なくなった。それこそ、山の奥にでも入っていくしかないのだろうか。

 

 

蛇イチゴ [DVD]

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