スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

太陽の帝国 1987年 S .スピルバーグ監督

スピルバーグの広大な映画。いろいろな映画を作っているスピルバーグだが、これは親しみやすく、「小公子」のような銀色の輝きをもつ素晴らしい作品になっている。中国の上海ではイギリス人が多数すんでいてリトルイングランドのような町を作っていた。彼等は沢山の中国人の召使いを使って、リッチな生活を営んでいた。その中の一つの家族の物語である。戦争は刻々と進んでいたが、リッチなイギリス人達はノホホンと甘い夢を見ていた。だが本気の日本の軍隊は、この町を攻撃する。爆撃を受けた多くの家族達は避難中にバラバラになり、主人公の少年も両親を見失い、一人で上海の無法の街をさまよい、日本軍の捕虜になる。

捕虜収容所での暮らしがはじまる。日本軍は捕虜達の目の前で日本の若者達を特攻隊の飛行機に乗せていた。その中で日本の飛行機狂いの若者(片岡孝太郎)と心が通うのである。その他日本人俳優では、伊武雅刀などが出ている。
たくさんの捕虜が飢えと病気で死んでいく。少年は我慢強く、生き残るため、サバイバル生活をおくっている。パパとママに会うまでは、死んではいけないと子供心に強く思っていたのだった。それが結局、彼を生きる希望へとつなぎ止めていたとも灯火だったと言えよう。彼は愛を注がれて育ったこどもだったのだ。少しわがままでなんでも手に入る裕福な家庭に育ったのだ。
だが、水も分け合うような生活の中で、甘えん坊のお坊ちゃんだった彼は、人間として、人々に手を差し出す事を忘れないたくましい人間に変貌していった。また彼は教会の合唱団のソロであったから、歌が抜群にうまいのだ。
日本人もイギリ人も聞き惚れる歌声。しばし戦争の事を忘れるのだった。
そうしているうちに、原爆が日本に落ちて、戦争は終わる。終戦の知らせが届く。上海沖からでも原爆の光は輝いて見えた。大きな大きな後光のような不思議な光を少年は、死んだ女の人の魂を天使が救いに来た光だと勘違いする。長崎と上海とは八百キロしか離れていなかった。
一緒だった捕虜達も、もう少し生き延びていれば、終戦になり死なずに済んだものを。
またまた一人で旅をする少年であった。威張っていた日本兵はいなくなりアメリカ軍隊に手厚く助けてもらえた。
親とはぐれた子供達が集められて親との再会を待っていた。そこで両親に会う少年であったが、戦争で傷ついた心は頑なになっていた。親と再会する場面は心にぐっとくる。あまりに激烈で辛かった日々を背中に背負っていたからね。
その他、イギリスの金持ち達の家に飾られていた豪華な美術品が何百何千とおかれている広い校庭のような場所がある。どれ一つとっても駄作はなく芸術の名品ばかりだ。こういうオブジェの場面は、スピルバーグの得意とするものだ。これには誰も敵わない。
美しい映画で、とてもまとまりがあってスピルバーグの作品の中でも良い作品として断トツ紹介したい映画である。
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太陽の帝国 (字幕版)

太陽の帝国 (字幕版)