スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

オールザッツ ジャズ 1980年 ボブ フォッシー監督

ちょっと古い青春の形見の様な映画ばかりみてる。青鼻を拭いた田舎娘だった私には、映画は、ことさらに縁のないものであった。いや無用の長物でしかなかった。そんな私が年を経て「All  that jazz」を見ている。ジョーズ沿岸警備隊の役で出ていた、ロイ シャイダーが主人公役をこなすロイでは迫力なさ過ぎと思われる面もあるが、儚さが出ていて却って良かったかも。ポスターなどで見たより、数倍も素晴らしい映画である。見れば分かるが、これは一目見て、すごい映画だと思った。マエストロを見た後だったのでよけいに目のごみが拭われたような気持ちであった。

ロイはブロードウェイの舞台作家であり、数々の舞台を作り上げてきたベテランの舞台監督でもあった。さて彼は、日々の創作に実は疲れていた。エネルギーを振り絞って、より良い舞台をと求めるのだが、その努力のストレスは大きくなるばかりで、かれの命を奪いかねない怪物になっていた。
そして彼はいつも身近に綺麗な女の幽霊を見ているのだった。初めはなんだ分からなかったが、どうも彼の死の暗示であり、
白い紗のようなベールに包まれた女で、最初から出て来ていた。不思議な雰囲気で、彼といろいろなことを話すのだった。この女が出ているということは、彼は死に近付いている、
もうすぐ死ぬのでは、という暗示が表明されているということだ。コレはちょっと素敵な手法であった。どうやって思いついたのか、不思議だしすごいことである。
彼女が死神であることは、誰も知らないが、えいがのあらすじに彼が死ぬことが書かれてあり、わかった次第だ。
かれはこんな生活を続けていたらいつか、自分が終わってしまうことを自ら知っていたが、知らぬ振りを通した。薬、酒、覚醒剤、女、が彼の支え棒であった。キュブラーロス博士の死についてのパロディー漫談も効果的である。
酷い生活。すべてブロードウェイの舞台のためだけに!ブロードウェイというのは実にそういう場所なのであった!
熾烈な戦いのもと、素晴らしい舞台が出来上がった。みんなプロ中のプロばかり集めた尖鋭部隊。彼らが踊る様は、美し過ぎるとでもいうべきか。とにかく綺麗な女が沢山出てくるわな。この鍛え抜かれた、磨き抜かれた身体を拝むだけでも映画の価値ありとしたものだろう。
ミュージカルを、芸術の域にまで持ち上げたボブフォッシー監督は実はあの「キャバレー」の監督でもある。基本的にミュージカルはデコデコしていて野暮なものが多いが、all that jazz はデコデコもケバダチもなく、フワフワしていて、思い出のアイスクリームのように甘く懐かしい味がする。何故って、
それは あの白い女のせいだ。そのようになるよう作り込まれたからで、奥行きのある作品として評価に値するだろう。フォッシーの渾身の作品として、「オールダッツジャズ」というベタな題名になってしまったが、思いの丈を表したかったのだろう。
f:id:dekochanya:20160118221510j:imageいつもお疲れのロイは心臓発作で、最後は亡くなるのだった。
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あまりに可哀想なジャズでの運命に対して、ジョーズでは頼もしい男を演じた。