スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

恐るべき子供たち 1950年 ジャンコクトー作

コクトー61歳の頃、映画化された作品である。何やらとりとめもない筋書きになっている。大人に成りかけた姉と弟の精神的近親相関とも言える関係はだれにもしられてはならない秘事であった。

二人の母親はいつも病気で寝たきりで、誰が家事をしているのか不明。父親の姿も全く見当たらない。
この様な家庭としての機能をみごとなまでに失った家ですごす姉と弟であった。
姉弟として仲がよいのは当たり前であるが、それ以上の感情がユラユラと薄暗い炎の様に燃上がる。
それは不気味な悲劇の幕開けにふさわしい。主役はエキゾチックな顔の(最初から外人だが)姉である。彼女に全面的に頼り、子供の様に甘える弟。まあ、母代わりということだろう。あれこれと手厚く世話をしてやるのである。悲劇はそこに別の人間が介入した事で始まり、姉の裏の姿があらわれてくる。彼女自身も気がついていなかった彼女の本当の姿。
現代社会に圧迫され、家庭の欠陥に穴をあけられた虚無と絶望の圧倒的な非社会的な罪のようなもの。それが彼女を弟の殺人と自分への殺人(自殺)へと導いてゆく。弟が自分以外の誰かを好きになるなんて、考えたこともなかったのだろう。姉は自分の婚約者さえも平気で殺してしまう。と言うか
魔術か呪いのように関わった人が死んで行くのである。婚約者は大金持ちで御殿ような家を持っていて
彼の死後も皆がそこで暮らすようになった。しかし広すぎて何か深い洞穴のような家だ。
コクトーはなぜこのようなセットを使ったのか理由はわからない。以前の小さな家でも十分であったのにと思う。なにかあったのだろうね。派手好きのコクトーらしいね。
姉は前よりも更に弟に執着し彼の恋を邪魔していく。弟は姉の友達(一緒に住んでいるアガードという女)に恋をしていた。その友人は、何故かおとうとに雪玉を投げて、大怪我をさせた男子生徒にそっくりであったのだ。でもなぜ他人を家に住まわせるのかなあ。ジェラールとかいう青年も、弟の同級生兼、友人という立場で一緒に住んでいた。おかしな家だなあ。家族という枠組が壊れていてものすごく不安定な「家」である。ゲガのため体を壊し弟は学校もやめている。一個の白い雪玉が、なぜか恐ろしい出来事を連れてくる 。いまいましすぎることだ。しかもあの時の雪は小麦を粗くひいたものだろう。まあどうでもよいが。
アガードが、雪玉を投げた男子生徒にそっくりだと分かっていて、わざと家につれてきたのだ。弟はきっとアガードに強く惹かれるはずだから。
じつは弟は学校時代からこの雪玉を投げた男子(ダルジェロス)に特別な思いを寄せていたのだ。結局、弟はひどい夢遊病にかかり広い大きな家を毎夜さまようようになる。アガードを通してダルジェロスを求めているのだろうか。何れにしても複雑な状態である。
姉がしていることは、まるで自分を追い込み破滅させるためのようだ。
アガードがあの男子生徒にそっくりという時点ですでに奇妙な偶然であり、歯車が狂ってきていることがわかる。男と女がそっくりという設定もそぐわない感でキュアリアスだ。
そのうち毒薬がいつの間にかこの家に入ってくる。実は雪玉を投げた少年からのプレゼントであった。
これでもう、このお話も終盤にかかります。「 毒薬」まで出てきたらねえ。
姉は毒をお茶に入れて弟にのませます。弟は苦しんで死んでしまう。そして姉も拳銃で死にます。
これで不幸な家族の話は終わりになります。
息の詰まるような家の中だけの重苦しい物語ですね。閉じた世界で展開される残酷なお話。
ただそれが、美しい姉や弟、そして人工的な映画のセットなどで、少しは緩和されているとは言っても、やはり少し特殊な映画かもしれません。人間の心の複雑さというか、そのようなことも含まれている。
 ただ異常に複雑に見えるが、客観的に見れば簡単なカラクリがあって当事者たちだけが躍起になってますます異常な方向へいってしまう。家ではこのようなことが起こりがちである、ということが伝えたかったのか。。
世間の人もびっくりの事件が突然起こることがあります。そのように閉じられた世界ではなんでもありです。子供の虐待、ドメスティックヴァイオレンスなどなど。意識の下で静かに生まれ育ってきたもう一つの現実。その圧倒的強さに人は負けるしかないのだろうか。
 
いずれにしても批評しにくい映画ですが、クラシカルでおもしろいといえばおもしろいのです。f:id:dekochanya:20160105152223j:imagef:id:dekochanya:20160105152234j:image お風呂の場面はただきょうだいで入ってるだけで、なにもありません。あしからず。
 

 

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