スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

バルザック伝 アンリ・トロワイヤ著

f:id:dekochanya:20150805111316j:image

1799から1850に生きたフランスのバルザックのことは小さい時から本箱にあって、「谷間の百合」となっていた。彼の代表作ではあるが未読である。わたしが興味を持ったのは、昔彼の伝記映画を観たことによるのだ。よくふとった(デブと言うべきか)、エネルギッシュな男の話。デブでグルメならこの私の仲間か同種族の人間であろうと、でこちゃんやは悟ったのだった。傑作を書こうと、コーヒーを(当時はとても高価だった)ガブ飲みしたりするのだが、みんなから食べ過ぎを注意されつづけていた。親しい友人に医者がいて、彼は常にバルザックの健康が栄養過多とコーヒーによって、害されつつあり、破滅に向かっていることを、忠告していたのだが。

芸術家との交友もおおく、ジョルジュ・サンド、ビクトル・ユーゴー、デュマなど特にユーゴーバルザックの死水もとったような友人だった。ただユーゴーは沈着冷静な男で、バルザックとは正反対の感がある。ユーゴー は人生に羽目を外すことなく、計算づくで文壇の最高峰に上り詰めた人間だ。このたびユーゴー肖像画などを幾つか見ることになり、その冷静な陰険な程の計算高さが、顔にあらわれていて、おどろいた!
いっぽうバルザックは感性で生きており、欲しいものは直ぐに買ってしまうのでいつも借金におわれていたのだ。それは地獄の様な生活だろう!彼はいつも思うのだった。「オレがちょいとペンを走らせて、傑作を書けば借金などふきとんでしまうわ」その場逃れの夢想にひたるのだった。
まあ実際彼の小説は人気で皆が引き込まれてしまう魅力もあったから、新聞社や雑誌社いろんなところから原稿の申し込みが殺到していたことは確かなのだ。女とも、色々な女と関係を持ち必死になって
付き合いを成立させていた。社交界ではデブでチンケな格好で出没して女たちから不評を買っていた。
だが一度彼が口を開けば、皆が目を見開いて人垣ができるのであった。開けっぴろげな彼の人柄とヴィガラスなエネルギーが溢れる彼にはつねに彼を助けたりする人があらわれるのであった。かの大富豪のロスチャイルド家も彼を助けた。助けるというのは金銭であるが。男爵の称号をオーストリアのハプスブルグ家からもらったロスチャイルドであった。バルザックは「あら皮」で文壇の寵児となりその後もあの手この手で作品を発表していく。粗皮とはなめしていない皮のことを言って、願いが叶えられるがその度に寿命が減っていって皮も縮んでいくというお話。そのほかはやはり怪奇的作品も多い。
彼は子供の時から母親に捨てられ無視され、つまりネグレクトされていた傷が癒えない人間だった。
そして得られない母の愛をほかの女性に求め続けた。ネグレクト人生については谷間の百合にくわしくのっているだろう。有名になりながらも借金取りに追われる毎日を送ったハチャメチャなかれにもついに神のお迎えがくる。瀉血治療をくりかえしたり浮腫んだ体の水を抜く治療をするうちにドンドン悪くなってもう医者たちも匙を投げて、かれの体が生きたまま腐って行くのを見ているしか無かったのだ。糖尿、腎臓、心臓何もかもが悪く壊疽が激しく、ベッドの周りは抜かれた体液で みずびたし。だれがこのような死ざまを選ぶものがいようか!だがこれがかれの激しいいきざまの激しい終わり方でありかれも納得するしかないものだったろうと思われる。そして飽食の現代に、一つの楔を打ったという手柄も賞賛出来る。悲しいことではあるが人間が食べられる分量は、おのずときまっていてそれを越したときバルザックの様になるよと身を以て教えたのだ。じゃあ文学は?
それは個人個人で読み解くのじゃ。
追記・オノレ ・ド ・バルザック というのがほんとうらしい。オノレは英語でhonourを表す。フランス読み。ドは貴族のみが持つミドル記号だが、かれの家は貴族ではないはず。派手好きのかれが、後でつくり定着したのだろう。

 

バルザック伝

バルザック伝