スッポコ谷の楊貴妃

もうすでに還暦女子。すっぽこだにで瘀血と戦ってます。ホテルの換気扇が嫌いすぎて旅行できないのが悩み。

ゲーテのウィルヘルム マイスターの修業時代より

ほんとうは三島を書こうと思ったが、なぜかゲーテなんかが出てきちゃったわけ。どちらも大問題には違いない。ゲーテの研究家でもなんでもない私。「美わしき魂の告白」というのはどうでしょうか。

短いお話ですし、マイスター修業時代の中卷にある挿話です。ある若い女がでてきます。そいつが、美しい魂をもっていていろいろ自叙伝をしゃべります。ある村のいいとこの息子二人から求婚されて困るはなしなんですが、もちろんゲーテですからただの恋愛物では全然なくて、真実を見抜く目をもっている恐ろしく賢い女なんですな。神とも時々はなしをして信仰とはこういうものというじぶんの信念を持っていた。この人はもう神というか、女神(ゴッデス)というかそれに近い片鱗をもった人間であった。父親が、病のとこについたときは彼女は外部の活動を止めて、看病に専念し、父の最後を見送りもしたのだ。つまり見た目は平凡な普通の娘の生活をしていたのだが、彼女の魂は高尚で、外部から汚すことはできないのだった。彼女の周りのあらゆるものが美しく、男女の性を超えたところからはじまっている。なぜ超えるのかと言うと、神が創造した人間は男 女のくべつなしに美しく神聖であるからだ。とはいっても私自身は、厳しいキリスト教徒ではないし、むしろブディストであるのだが。それでいて彼女は、男女の性についてもきわどく知っていると告白する。聖少女のような彼女がこんなことをいうと、
こちらはマジでドギマギするのだった。
修業時代の中でこの作品は小品ながら、ゲーテの特徴が出し惜しみせずにだしてあり理解するのに
ふさわしい作品であろうと思う。まさに美わしいというのはこのようなこと。ある平凡な男(婚約者)を通して俗世とはこのようなものだとゲーテは言っているのです。で、婚約者は婚約したと思って、彼女の体に迫って来てうるさい訳。でもかれとは結ばれることもなく結局別れることになる。
またゲーテの文章はなにか彫刻を指でなぞっているよう感覚があり、だれにもまねのできない彫刻(たぶん古代ギリシャの)のような文章が書ける人であろう。
そして
修業時代は少し長い話ですがとてもおもしろいはなしです。おもしろいと言っても、街を通ったり、岩石だらけの山を越えたりで、ただウィルヘルムの気持ちが書かれているだけなのになぜこんなに感動していっしょに旅をしているような気分になるのか。たぶん徒歩の旅で、現代では体験できないゆっくりとした時間の流れに乗り、足元の石ころにまで注意がいくようなふしぎな体験だからなのか。竪琴を持ったある老いぼれの歌唄いの爺さんや、心臓の悪い親のない少女、旅の一座と旅をして行くのだが、行く先々でたいてい金持ちの家に泊まることになっている。昔の旅人は、町の素封家(金持ち)をたよって旅行することが多かった。そこのむすめと恋愛するわけよ。姉妹で取り合いになる訳。もてるウィルヘルム。しかし、好きな相手には嫌われるわけ。でも好きな相手と一度きりキッスをする。それは燃えるようなキッスで、若い彼はまじで懊悩するのだった。しかしおんなの本心を確かめることができず、旅をつづけていく。あれは自分を本当に好きでした行動なのかどうかわからないのである。一度だけのキッスはナイフでさされた深い傷を負った心臓から吹き出す血潮のようなできごととして彼の心に残った!f:id:dekochanya:20150714222327j:image 
旅はつづくのだが修業時代と遍歴時代とがあって、長いから途中で交錯してしまうので困ってしまうのよね。覚えていられないわ、全ての出来事を。

 

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)

ヴィルヘルム・マイスターの修業時代〈上〉 (岩波文庫)