これは恋のために気が狂って行く女の記録である。だがこの娘には重要な後ろ盾が控えている。
いわゆるユーゴーという文豪の娘である。
この女はアデルといったが知り合いもツテもないアメリカに単身でイギリスガーンジー島から恋人を追いかけて来たのである。
「 この話は実際あったことであり、真実である。」とまたまた監督はつぶやくのである。
これはトリュフォーのよく使う手である。
なぜこの女がどんどんおかしくなって行くのかは、多分育った環境に原因があるのである。
この女、元を正せば、かのフランスの文豪ビクトル ユーゴーの次女である。 ユーゴーはフランスの政治から逃れて、イギリスの南の海のガーンジー島に逃亡していたのだ。
ユーゴーの娘である事を隠しながらアメリカで生活している。いつも本屋から紙をたくさん買っては、下宿で、じぶんの恋心を書きまくる毎日。
仕送をねだっては、お父様へ手紙を出す。結局、働くことも思いつかぬし、異国にいても、超お嬢様のままで、恋ばかり夢見て実家のお金をアテにしているなんて、スッポコそっくりだわ?
さて追いかけられているイケメン美形のピンソン大尉は大変迷惑していて、彼女のストーカーのような行動にますます不気味さを感じていた。女は結婚をお金で迫ったが、ピンソンに拒絶される。
ただの彼女の片思いであったのだが、彼女の思いは、業火のように燃えており、山でも海でも、何処にいても彼女は追いかけて来て、ピンソンの目の前に表れては、愛の告白を一人芝居のように告白するのであった。
男は、親元に帰るように何度も諭すのだが、全く聞く耳もたず、自分の気持ちだけを押し付けるのであるから、大変である。ピンソンという名前はおぼえにくく苦労した。
アデルは
要するにユーゴーの娘であったのだ。その意味でこれは恐ろしい話なのである。
ちやほやされ、自分の思いは全て相手に通じて希望が叶うと、思い込んでいるのだ。
何をしてもユーゴーの名のおかげで許される。
まるでスッポコの心と同じだ?
これはある意味、恐ろしい事であろうに。
彼女はそういう気持ちでいることが楽しかったし、それが生きることであった。血が動くのである。
いい塩梅にね。
ピンソン大尉と結婚したと両親に嘘の手紙も出した。新居のお金をねだった。
両親は、娘の浅はかな行動を心配し、親元にかえってきてほしいと願った。
彼女は、その間もずっと紙に何かを書き続けてけていた。
そしてとうとう、ピンソンの部隊を追ってバルバドス島にまで行くのだった。
バルバス島というのは、南の島でしょう。ピンソンは、この島で、アデルを見かけ、心底ゾッとする。
まさかこんな原住民の住む島にまで追ってくるとは、と娘の強い信念に圧倒されたて驚くのだった。
娘は原住民のおばさんに世話をされて、医者にもみてもらっていた。アデルは、島に着いてから、高熱を出して倒れいく日も看病してもらっていたのだった。
ピンソンは、道でアデルと出会った。近づいて来るアデル。緊張して構えるピンソン。まるで真昼の決闘状態だ。
次の瞬間、アデルは、ピンソンに気がつきもせずに、通り過ぎた。
通り過ぎたのだった。彼女は真数具に前だけをみていた。何かをぶつぶつと呟きながら…!